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M.PEOPLE

<前編>25年に渡り企業のヘルスケア支援に取り組む事業部長が、産業保健にかける思い

2019年から順次施行された働き方改革関連法案、近年の新型コロナウイルスのまん延などにより、産業保健活動に注力する企業が増えています。しかしながら、まだまだ取り組むべき課題も多いと、産業保健事業部長の歌代さんは言います。
25年に渡り企業のヘルスケアに取り組む歌代さんに、産業保健にかける思いについて聞きました。

(株)エムステージ 取締役 産業保健事業部長 歌代 敦
前職のヘルスケア企業にて、20年以上に渡り企業や医療保険者に対しての健康・医療・メンタルヘルス分野のコンサルティングに従事。2019年、エムステージ入社。産業保健事業部にて引き続き企業の健康支援に携わっている。

――歌代さんは通算25年に渡り、一貫してヘルスケア事業に携わっていらっしゃいますが、ヘルスケアに取り組み始めた当時からこれまでのお話を伺ってみたいと思います。

はい、私は25歳の時に、縁あって前職のヘルスケア企業に入社しました。
そこでは健康に不安のある労働者やそのご家族が電話で医師等専門家に相談できる、健康相談窓口サービスを主に提供していました。私はサービス導入者となる企業人事部門や健康保険組合へのコンサルティング営業を行っていましたが、働く人の健康に寄与できること、明確に社会に貢献できることに強いやりがいを感じていました。

――当時から医療を取り巻く課題というのはあったのでしょうか

ちょうど医療制度改革の頃で、医療費負担が1割から2割・3割になる、というタイミングでした。増え続ける医療費をいかに抑制するか、適正な医療受診やドクターショッピング*¹を減らすためにどうすればいいかという社会課題がありましたね。そのために、まずは健康相談窓口で相談してもらって、家庭の常備薬を整えることや、無駄な受診を減らすために症状に最適な診療科の医師を紹介することなど、医療への適正流入を実現するための取り組みを行っていました。
国の改革も大きく意識しながら、あるべき方向へと企業や健康保険組合・自治体を支援していく仕事を「面白いな」と思いながら、気づけば随分と長く携わっていました。

*¹ドクターショッピング:病院の診察に満足がいかず、次々と医療機関を渡り歩くこと

――非常に大きなやりがいを感じていらっしゃったのですね。当時の働く人の健康問題というのは、どちらかというとフィジカルの問題が多かったようですね。

そうですね。企業がメンタルヘルス支援を行うようになったのはもう少し先です。
多くのエムステージ社員はまだ小学生くらいの頃だと思いますが、1997年に山一證券などの金融機関の破綻が相次ぎ、その後、日本の自殺者が一気に3万人を超えていく事態となりました。そういった中で、企業がメンタルヘルス支援を含めた健康支援をやらなければならない、という流れができてきたのです。
私も企業のメンタルヘルス支援は絶対にやるべき支援だと思い、2000年頃にEAP(従業員支援プログラム)の事業化を進めました。

――その頃から企業のメンタルケア、働く人のメンタルケアに関心が移って行かれたのですね。

いかに働く人のメンタルを含めた健康支援によって、労働者の健康維持と、企業の生産性向上に寄与するかをよく考えるようになりました。あるべき姿に向けて、その頃は管理職としてマネジメントやメンバー教育もやりつつ、サービス設計から企業への営業体制の構築まで、先頭に立って取り組みました。
安全配慮義務が明文化されて、企業や健康保険組合もメンタルヘルスケアに取り組み始めていましたが、社会全体が課題として大きく認知したのは2000年の電通の過労自殺事件 *²以降だと思います。

*² 2000年の電通の過労自殺事件:1991年に社員が過労自殺に至った件について、 会社が遺族に約1億6,800万円を支払い和解が成立した。 「過労自殺」に企業の安全配慮義務違反を初めて認定した判決といわれる。

――自主的にメンタルヘルス支援についての勉強もはじめられたと伺いました。

2015年の労働安全衛生法の改正の時にも、どういう制度になるのか非常に興味を持っていました。
改正にあたってのワーキンググループにも参加してみる中で「産業医」がキーワードとして度々登場したことから、産業医の先生を探して相談に行ったり、セミナーに参加したり、関連書籍を読んだりと、個人的に勉強を始めました。

――そしてその中で知った「産業医」や「産業保健」に、関心を持たれたのですね。

2015年にストレスチェック制度が義務化されて、高ストレス者への医師による面接指導など産業医の関与が増えました。けれど、本当はもっと以前から産業医は法律で規定されているのに、産業医がどうしてこんなに軽視されているのだろうと感じました。コンプライアンスと言いながら、国も企業も見て見ぬふりで、法律が変わって義務になったからやります、という状況にすごく違和感を覚えたのです。

産業医側にも、名義貸し状態で業務を実施してくれない産業医がいるという課題がありました。
前職の提供サービスとしてストレスチェックをやることになりましたが、実務を行ってくれる産業医がいないということで、協力できる企業を探して、産業保健サービスを行うエムステージに声を掛けました。

(後編へ)